神戸の谷に第一歩を踏み入れた前回のコースは、石楠花谷→ダイヤモンドポイント→地獄谷西尾根。
今回は地獄谷→ダイヤモンドポイント→石楠花谷。往路も復路も谷を通り、今度は石楠花谷を下ってみる。

秋色に染まった絨毯の上を軽快に進む。

しばらくは、沢を眼下に眺める。

次第にコースは沢へと近づき、いくつもの徒渉をしてゆく。

釣り人としては、かなり楽しめるルートコースである。

右の落ち込みをチェックしてから、次にフライを打つポイントは。
なんて、いつの間にか故郷の渓流が重なってくる。

見通しの良い蛇行して落ちてくる水の向こうには、異様な黒い塊が。
ここからの距離でもその威圧感を感じ取れる程で、少し恐ろしさも感じてしまう存在が現れる。

ここの流れで最も大きい堰堤と思われる。
無機質で黒く光った冷たい壁から、絶え間なくザァーと流れ落ちる直ぐ下には、なかなかの淵が出来ている。
なるべく影を落とさないよう、少し小高い場所からしばらく様子を見る。
魚影らしきものは確認できなかったが、ここは気になるポイントである。

地図を取り出す。
一番大きな堰で目立つので、容易に現在地を特定出来た。
この脇の急階段を堰の端に沿って登って下りればその先へ進めるのだが、
階段を下りて見えたのは、水に消えていく階段の先だった。

まさか、と思い、水際まで下りて先を見やるも、水没で通れそうな箇所は無い。
楽しめそうな谷だと、意気揚々とここまで来て、まだ谷の3分の1程までだろうか。
重い足取りで階段を引き返す。

しかし、ここで引き返さずに先へ進む人がいるはずだと、戻り途中で踏み跡を発見。
ここから急登して尾根の一端らしき場所に出る。

ここは地獄谷東尾根の一部だろうか。
前回に下った西尾根から見えた尾根にいるのかも知れない。

水没の先へと下りる。
上流からはサラサラと細い流れが注ぎ込む。
一体どれくらいの期間、ここは水没したままなのだろうか。

上流へ向かって歩を進めると、地獄谷道の道標に少し安堵する。

ここからまた、徒渉を繰り返してゆく。
石楠花谷よりもこちらの谷は、正規ルートで渓流を楽しめるようだ。

渡る前に小さくても淵があれば、静かに近寄って様子を見るようにする。

上がるにつれ、様々な表情を見せてくれる。
滑床もあり。

ガレた岩の下を水が流れ下ってゆく。


滝も大小現れる。


これも滝と呼べるのかは分からないが、ジグザグに落ちる水の動きと、
段々とランダムに刻まれた岩肌の雰囲気が美しい。
まばらに散る落ち葉が良い。

既にコースは流れの脇ではなく、渓流の中を遡行してゆく。
流れの左、濡れて滑りやすくなった岩肌を見極め、慎重に足をかけていく。

大きな岩を乗り越えてゆくたびに、次はどんな水の流れが現れるのか、
ワクワクしながら想像して谷を堪能する。

もう既に気分は、右手にロッド持ち、熊鈴をチリンチリンと鳴らしながら
次に打つべきポイントを捜しているようだ。

上流を見遣る視界に空が入り始める。
谷も後半を過ぎた頃だろうか。

水中でキラリとした光を確認する。
脂鰭は無し。

大淵現る。



夢中で岩に足を掛けて遡行しているうちに、僕はすっかりこの谷を気に入る。

もう少し経てば葉も落ちて、浅瀬には薄氷が張ったりして、冬の谷の表情を見る事が出来るのだろう。

降雪があるか分からないが、年間をとおして通ってみたい谷である。

流れは緩やかになり笹の群生が見え始めると、いよいよ谷も終わり。

ダイヤモンドポイントで折り返し、石楠花谷へ下りる事にする。

復路、石楠花谷の小滝上の岩に腰を下ろす。
靴を脱いでアグラをかいて目を閉じてみる。
無とはほど遠い。
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テーマ:山登り - ジャンル:趣味・実用
- 2012/12/04(火) 10:59:28|
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