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母なる山へ

ずっと見続けてきた山脈。
小学校の校舎4階の教室からは、諏訪湖のきらめきの向こうに八ヶ岳が見えた。
冬の景色が大好きだった。
頬を刺す様な澄んだ冷気の向こうには、真っ白い雪化粧の八ヶ岳、そこから少し右へ目をやると
蒼白く浮かぶ富士山が見えたのを今でも思い出す。
最高の眺めだった。

東京を離れ、関西へ移る前になんとしても登っておきたかった。
時を同じくして東京を離れる親友とその頂きを目指した。

八ヶ岳を目指すのは今回が2度目。
前回は、諏訪盆地で育った者なら誰もが経験する中学の登山。
登山の数ヶ月前から、通学時には学校指定のキスリング型ザックに、ありったけの辞書やら鉄アレイなんかを詰め込んで通ったのを思い出す。
目指した赤岳は濃霧に包まれ、僕のクラスは一歩手前で断念したが、希望者のみ登らせるという事で、他の何クラスかは赤岳頂きにたどり着いたのではなかったか。

10月22日 AM7:00 朝日を背負った八ヶ岳。一路、登山口へと車を走らせる。
どんなに僕の心がざわついていても、この姿をみるとピタリと穏やかさを取り戻すから不思議だ。
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グンと標高を上げながら登山口への林道を駆け上る。
昨夜に横着してガスを入れなかった為、給油ランプ点灯にハラハラしながらも、色づき始めた山の木々に気分は一気に高揚する。
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AM7:30 登山口。
今回のルートは、往路:桜平→夏沢鉱泉→オーレン小屋→赤岩の頭の分岐を経て硫黄岳→横岳
復路:硫黄岳から夏沢峠経由で桜平まで、14:30下山予定。
10222012_3.jpg

夏沢鉱泉まで、永遠と続くかと思われる結構な勾配の砂利の林道をひたすら上がる。
その脇には水が流れる。
観察しながら、良さそうなポイントを発見し目を凝らしてみる。
試しに石を投げ入れたが、影は走らず。
硫黄の水に魚は住まないんだっけ?
10222012_4.jpg
湖から始まった僕の釣りは、河から渓流、そして更に上へと、そのフィールドを山奥へ求めるようになっていた。
魚を釣るという行為以外に、山のもっと先を知りたいと思い始めていた。

初っぱなからバテた、変化に乏しく、長い砂利坂を抜け、夏沢鉱泉で登山計画書を記入。
10222012_5.jpg
当初の登山予定日が雨マークだったため、一日前倒ししたが、素晴らしい秋晴れで大正解。
山の神に感謝、感謝。
10222012_6.jpg

夏沢鉱泉をスタートする。
脇を通る長いパイプは夏沢鉱泉で起こす水力発電の為に、上流からも水を引いているのだと思われるが、実際はどうなのだろうか。
視界の開けない木々の間を歩き、次の通過点であるオーレン小屋を目指す。
10222012_7.jpg

オーレン小屋に到着。
ここで小休止。
ザックを下ろし、シリアルバーをかじりながら汗で濡れた背中を乾かす。
往路は夏沢峠を通らず、峰の松目方面へ。
10222012_8.jpg

ここを過ぎてすぐの、だけかんばキャンプ場にはモンベルの山岳テントが一張り。
朝日を浴びた眩しいオレンジにうっすらと霜が降りていた。
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道幅は狭まる。
少し息を上げながらシングルトラックを登っていく。
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赤岩の頭分岐点。
朽ちた木々には苔が蒸し、まだ森の匂いが感じられる。
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たすきに掛けたボーイスカウトで使用していた水筒の水を飲んで天を仰ぐ。
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徐々に視界が開け始める。
これが見えるのと見えないのでは大違い。
一気に活力が増す。
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この斜面で一気に高度を上げる。
シヒィーと僕の肺がフルに稼働する。
息が上がる。
腿の筋肉は収縮を繰り返し、次第に悲鳴を上げだす。
10222012_14.jpg

ここで小休止。
振り返って腰を下ろし、無風の全く音の無い世界に、ドクンドクンと全身が心臓になった様な僕の音が、内で静かにこだまする。
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尾根に出た。
視界は一気に開けた。
眼前には、目指す横岳と右には主峰の赤岳。
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ここから左手に次の通過点の硫黄岳。
一つ目の頂きを目指す。
10222012_17.jpg

硫黄岳頂上へ向かう途中のガレ場から。
険しさを増す山々が美しい。
10222012_18.jpg

だだっ広い、硫黄岳頂上。
10222012_19.jpg

爆裂した硫黄岩が確認出来る。
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硫黄岳からトラバースし横岳へと向かう。
向こうに見える山のグラデーションが美しい。
歩き難い下りを、浮き石に気をつけながらひたすら下る。
10222012_21.jpg

写真右端の硫黄山荘で昼休憩の後、後ろを振り返る。
こちら側から見ると、硫黄岳は穏やかな表情。
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さて、ここで現れたいくつも立ち並ぶ杭の群れ。
立て札に記されているとおり、この杭はシカの防護柵の支柱なのだ。
僕はこれを見て驚愕した。
日本全国で鹿やイノシシの爆発的な増加により各地で被害が出ている。
尾瀬などの希少な湿地帯の植物や、この辺りでは車山のニッコウキスゲなどがシカの食害に遭っていると聞いていたが、これほどの高地までにシカは現れるのか。
2,700メートルを超える場所まで餌を求めてやってくるのだ。
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ずらりと続く防護柵。
ここまで上げるのに、人力かヘリかは知らないが、いずれにしてもかなりの労力と金が掛かっている。
しかも、柵を作るには限界があり、すべてをカバー出来る訳では無い。
出来る限りの自然風景を維持するためにも柵はよろしく無い。
こんな素晴らしい景色がこんなもので邪魔されていたら、誰だってガッカリでしょ?
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これは本当にオオカミの出番である。
オオカミに関して、僕の以前の記事はココからどうぞ。

設置が平成22年。
シカが目撃され始めたのはもっと以前からという事になる。
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ジリジリと標高を上げ、横岳の頂きが近づくにつれ、斜面は険しさを増してゆく。
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年配の男性が一人、岩に腰を下ろし握り飯を頬張っているのが見えた。
なるほど、この景色を前に飯を食うのは、さぞ格別だろう。
蒼く浮かぶ富士と横岳。
10222012_26.jpg

あの頂辺まで行くのだ。
10222012_31.jpg


横岳頂上まであと少しの、最後の急な岩場より。
写真中央上には、少し見づらいが諏訪湖、その更に右奥は3,000メートル級が連なる北アルプス。
ここから見ても、その険しさが見て取れる。
僕はここから見る、初めての諏訪湖に感動した。
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本日の最終目的地、横岳頂上到達。
親友と共に記念撮影。

最高の眺めを前にしばし時を忘れる。
やり残した事はやはりこれだったのだと確信した瞬間でもあった。
心の中でなにか一つ吹っ切れた。
来て良かった。
10222012_27.jpg

復路は硫黄岳まで戻り、そこから往路とは別の夏沢峠を下った。

14:30、予定通り無事下山。
真っ赤に燃える紅葉が山登りの最後を祝福してくれた。
10222012_32.jpg

素晴らしい最高の一日、大自然と山の神、親友に感謝。
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テーマ:山登り - ジャンル:趣味・実用

  1. 2012/11/10(土) 23:34:41|
  2. Outdoor
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

何年か前に行者小屋にテン泊し
赤岳~硫黄へ縦走したことを思い出しましたがそれより中学の登山!
今思えばボクらの市だけは西天狗、東天狗だったので楽なはずだったのですが
当時はしんどくて「もう絶対山なんて登らん!」と思ったのに
何年(数十年?w)か経つと忘れて登りたくなるから不思議です。

八ヶ岳は蓼科山、縞枯山、茶臼山にも登っています。
何年かかけて、何回にも分けて縦走しようと思っていますが
阿弥陀・編笠・権現あたりをそろそろ、1度で制覇しないと厳しそうだな、と思っています。
横岳なんてほら、ロープウェイで・・・(笑)
  1. 2012/11/11(日) 21:53:52 |
  2. URL |
  3. いわなたろう #-
  4. [ 編集]

いわなたろうさん

放置してすみませんでした。

そうなんですよね、中学登山って、僕も当時に何が楽しくて山登るんだって思ってました(笑)
あーそっか、ロープウェイって手が、、、(笑)
僕これ詳しくないんですけど、あの横岳のことなんですよね。
どの辺まで行くんだろ?
それにしても、横岳頂上まで行ったら目の前に見えてる赤岳登りたくなるじゃないですか。まぁ、目の前って行っても随分歩くんでしょうが。
次は赤岳だな。中学の時のリベンジしたいです。
  1. 2012/11/16(金) 17:11:22 |
  2. URL |
  3. SKY #LkZag.iM
  4. [ 編集]

横岳のロープウェイはピラタス蓼科のロープウェイです。
今回行かれた硫黄岳の隣の横岳じゃなくて北横岳なのです。
同じ山脈に2つも横岳があるとややこしいですよね。

硫黄から赤岳は稜線歩きなので楽しく、あっという間ですよ。
  1. 2012/11/18(日) 21:59:34 |
  2. URL |
  3. いわなたろう #-
  4. [ 編集]

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