釣りにハマって以来、過去に4尾のバスを掛けたことがあるが、
そのうちの3尾はトラウト狙いでたまたま掛かったもの。
残りの1尾は四国のダム湖で、バスを釣るという目的での釣果であった。
そんな訳で僕はバスに関する知識がほとんどなく、いわゆる、それ用と呼ばれる
タックルも所有していない。
しかし、バスのパワフルな引きの刺激に興味が出始めていた。
子供達が通う保育園では、子を通じて色んな親と会う機会がある。
メインはカミさんで、ママ友というやつだ。
もちろん僕よりもママ友のつながりが深いため、お互いに子供のことや
仕事、家庭の話をすることになる。
あるとき、誰だれ君のお父さんは釣りをするらしいよ、とカミさんから聞いた。
バス釣りだと言う。
それから程なくしてその家族のお宅にお呼ばれすることになり、以前からカミさん伝いで
聞いていたバス釣りの話を聞いた。
いつも通う湖にボートを持っており、そこに持ち込むタックルは10セットだと言う。
僕はそれを聞いて嬉しくなった。
ボートがあるとか、10セットだとかと言うことではなく、バス釣りの分野でも情熱を
持った人と知り合えたのである。
それから時間を経て、一緒に行きましょうとお誘いを頂き、もちろん是非お願いしますということで。
4時に迎えに来て頂き、約一時間程で釣り場へ到着。
車は大きなゲートの前で停車し、彼がゲートを開ける。
ゆっくりとゲートを通過し、建物の間の細い道を抜ける。
目に飛び込んできたものは、ズラーっと並んだ幌をかぶったバスボートの数々。

鳥肌たって、カーッと胸が熱くなった。
こんな世界があるんだと、ショックを受けながら意味も無く頷く。
もちろんその時の顔はニヤケっぱなしだ。
早速、準備に取りかかる。
と言っても、僕はただ見ているだけなのだが、1つ1つが僕にとって新鮮で興味深い。

幌を外す。
おおーっ!これがバスボートってやつだ。

これが話に聞いていたタックルの数々。
もちろんこの中に僕のは含まれていない。

トレーラーを接続する。

ここに乗っていて下さい、と僕はボートに乗ったまま近くの湖へと下りるスロープまで。
時間は6時前。空は明るくなり、少し肌寒い。

トレーラーからボートを下ろす。
押して下ろすのかと思ったら、ボート後部のエンジンスクリューをバックギヤに入れて
その力で少しずつ下りていくのだった。
1つ1つに感動してしまう。

バスボートのコクピット。
レーシーなステアリング周りに計器が並ぶ。
計器中央のデジタル表示はタコメーターだろうか。
右上のモニターはソナーであり、これは船体後を計るもの。
船体前にもモニターが一台あり、それは前を計るものであるという。
この二つのモニターを見ながら、湖底の地形を把握してバスの付き場を探っていく。

スロープ付近の岸を一通り様子見したのち、大きく移動します、と
船上のタックルを固定し、荷物をキレイに片付ける。
キャップを脱いで下さいと言う。
さぁ、と後部のエンジンが唸り始めると、船体は大きく後傾したのち
スピードが増していゆくと共に、先端が下がる。
息継ぎすることなく加速し続ける。
もの凄い風圧で身体がシートに押しつけられ、掛けたレイバンの上から下から
風が目に入り込み涙で前がかすむ。
バンバンバンッ!と断続的に船底が波間を飛んでいく。
脳天まで痺れる様な加速力である。
バスボートは優雅な乗り物じゃないですよと言っていた言葉を思い出す。

モニターが示す速度は100キロを少し超えていたが
水面ギリギリをかっ飛ぶバスボートの体感スピードは
遥かにそれを上回る。
このだだっ広いフィールドで、その日の風や水などを判断して
大きくポイントを移動するには、この機動力が必要なのかもと
思ってみたりもしたが、ただただ単純にかっ飛ばしたいという
欲望を満たすのにもうってつけ、なのは明白である。
モニターには地点登録ができるらしい。
映し出された赤い線は、彼のポイント間を繋ぐ線であった。
今日はどうやら渋いみたいだ。
エレキで少しずつ移動しながら探っていくも、これといった反応は得られない。
湖から橋をくぐり川へ移動。
僕はフライに切り替え、岸のボサ手前にポッパーを撃っていく。
2度程、魚が出たが掛けることができなかった。
すると、よーっし、と彼のロッドが絞り込まれ、ラインの先を見ると
バスが水面下で身を翻す。やっと本日一番かと思った瞬間、痛恨のバラシ。
昼飯もそこそこに、ポイントを大きく移動しながら、今日の一尾を探していく。
バスボートでの"かっとび"も既に心地よく、快感に変わっている。
それはにスポーツタイプのサングラスが必ず必須であることを付け加えておく。
僕はもう1つ予備にと持参したオークリーがあって助かった。
そうこんな感じで丁度良いくらいだ。

フライの遠投や風吹く中でのキャストも次第に慣れてくる。
比較的大きなボートと言っても、風が吹くと隣を釣りかねない。
それを回避する為に、ロッドでラインを引き上げながら、ライン全てを空中に
出さずにキャストする(ロールキャストと言うのか?)ことも出来るようになった。
それが意外と狙った場所に落ちてくれるので、それに満足したりして。
夕暮れが迫る。
ある区間を何度か往復で流していく。
フライキャストに夢中になっていると、隣のロッドが曲がった。
キタっ!
水面下でバスだと判断出来た。
今日初の一尾目、流石である。

遂にハッピーアワーが来たぞと、僕はロッドを持ち替えて
2本のダンシングフックをつけたローリング系のスプーンを
根が掛かり覚悟でストラクチャー周りを攻める。
沈めて軽くしゃくりながら、ストラクチャーを抜けた辺りで
ティップが入った。
よっしゃ、乗った!
重い引きに更にティップが入る。
どうだ?バスか?
一瞬魚体がちらりと見える。
あれ?なんだか様子が、、、
一瞬のみ姿を見せた魚は体勢を立て直し水中へと突進する。
ジジーっとラインが出て行く。
心地よい格闘の末上がったのは、ぎろりとこちらを睨む鯉だった。
本命では無かったが、実に良いファイトであった。

そろそろタイムアップ。
一尾を求めて飛び回った湖に日が暮れる。
ボートはゆっくりとスロープへ戻る。
同じ釣りでもこんな世界があるのだ。
僕の釣りがまた少し開けた気がする。
本日の衝撃的な始まりからを、心地良い疲労のなかゆっくりと反芻していた。

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素晴らしく貴重な体験をさせて頂き、ありがとうございました。
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- 2012/06/03(日) 14:32:33|
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