あれほどまでに待ちこがれていた瞬間は突然にやってきた。
なにしろ1投目のことだったのだから。
友人の度重なる釣行で得た経験、知識、そして数々の実績から
アドバイスを受けた場所に立ち、的確なポイントへルアーを放り
教えられたカウントをとってリトリーブすること約25回転。
繋いだ14gの肉厚のスプーンはグンッと泳ぎを遮られ、半信半疑でアワセを入れた。
7.7fのTSSに6lbのナイロンライン、やや強めのドラグ設定。
タックルの持つパワーの余力を残しながらリトリーブを続ける。
隣にいた友人の、掛かった!の声を聞きながらも僕は未だ確信できないでいた。
5メートル程先、まだ光量の少ない水面下にギラギラと白く輝く魚体が確認出来た。
身体全体が心臓になったようだった。初めて鱒を釣った時の様に、
ただがむしゃらにラインを巻き取っていた。
ただただ、バレるな、これを逃したら、、、と。
焦ってラインを巻き取り過ぎ、ロッドティップからの僅かなラインという状況で
魚は目前で何度も暴れた。
その度にビンビンとした、もうこれ以上ショックを吸収出来ない
ラインの状況が手元に伝わってくる。
背面ポケットに仕舞ってあるネットを出す余裕も無く友人のを手渡してもらう。
無事にネットに収まってくれた。
本当に美しい銀色だった。

友人に振り返り、共に笑顔で握手を交わした。
メジャーテープを当ててもらうと36センチ。
僅かな朱点を確認した友人がサツキマスと言っていた。
僕には詳細に魚体を確認する余裕が無かった。

しっかりと目に納めている様で、心はすでに別のところにあった。
2日前の口論、見上げた電球のフィラメント、テーブルの深い茶の木目、しゃがむ度に見るクロスの破れ、
内気圧による重い扉、騒音、エンジンの唸り、右肩の痛み、漠然とした不安、わがまま、後悔、希望、
空気の匂い、友人、水色、家族、つながり、土地、決心、勇気、愛情、、、
2年前から通い始めたこのフィールドに、来シーズン以降、もう立つ事はないと思う。
きっと、友人と共にするここでの釣行も今回が最後。
そんなラストを飾る結果をプレゼントしてくれた友人に心から感謝する。
通い慣れたここまでの長い道のり、景色、狭い道幅でのハンドル操作、路面の凹凸、ほんの些細な
物事全てが既に懐かしく、離れがたい想いで胸が一杯だった。
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テーマ:ルアーフィッシング - ジャンル:趣味・実用
- 2012/03/22(木) 14:52:49|
- Fishing - Lake
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| コメント:4
また素晴らしい釣りをされましたね。
良い魚。静かなる熱を帯びた時間。
そして何処となく切なくあるもの。
それで良いんだ。
それで良い。と雲の上から大先輩達が見ている気がします。
僕も何時の日か、地元のダムでランドロックに逢いたいと、今年もロッドを振ります。
- 2012/03/23(金) 00:07:53 |
- URL |
- Megaceryle #JalddpaA
- [ 編集]
見事なラウンドロックキャッチおめでとうございます。
何時つれるか解らないまま何回もの釣行、さぞヒットの瞬間はただただ頭の中が真っ白になりリールを巻くだけだったでしょう・・・
友人との2年間、月日が経つにつれて遠い記憶の中に残せるものが出来た事は幸せですね!
- 2012/03/24(土) 17:48:46 |
- URL |
- hiraipapa #-
- [ 編集]
Megaceryleさん、こんにちは。
素晴らしい釣りと言って頂き、素直に嬉しく思っています。
釣り人それぞれの想い、目的、感じ方があると思いますが
今回の釣りはとても特別で、大切な物を再認識させてくれました。
どんな気持ちにあっても、きっと僕は水辺に立つのかなぁ、いやきっと
そんな時だからこそなのかも知れませんが。
その環境で考えるからこそ気持ちをクリアに出来る事もあるんだと。
僕は特別に信仰深いわけでは無いのですが
山と水に身を置くと、日本古来の自然崇拝を意識し
心が穏やかになりパワーが充電されます。
いつかランドロックの写真とともにMegaceryleさんの
物語が読める日を楽しみにしております。
- 2012/03/26(月) 15:52:04 |
- URL |
- SKY #-
- [ 編集]
hiraipapaさん、こんにちは。
あれだけ今日か今日かと待ち望んだランドロックも
たったの1投で姿を現すとは、なんだか複雑でもあります(笑)
何れにしろ、これは友人からのプレゼントですので(笑)
おっしゃる通り、きっといつまでも記憶に残る釣行です。
色々な意味でこんな思い出はなかなか無いと思います。
- 2012/03/26(月) 15:56:49 |
- URL |
- SKY #-
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